京都市北区に「深泥池」(みどろがいけ・みぞろがいけ)という有名な心霊スポットがあります。
「タクシーに乗った女性客が消え、シートが濡れていた」
・・そんな怪談話を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
全国に広まることとなったタクシー怪談の発祥とされるのがこの深泥池なのです。
深泥池は太古の自然が残る
日本最古の天然の池
深泥池は池と湿地帯からなる、周囲1.5キロ、面積は9ヘクタールの天然の池です。
池の形成はなんと14万年もの大昔!
日本最古の池とされています。
1万年以上前の最終氷期と温暖地に生息する生物が共存するという、学術的にもとても貴重な池であり、校外学習・研究で訪れる学生や学者も多い場所です。
ミズグモという、世界で唯一水中に棲む蜘蛛が見つかった場所でもあります。
氷河期から生き続ける生物がすんでいるって・・すごい!
太古の自然生態を保ち、国の天然記念物にも指定されている「深泥池生物群集」を包含する貴重な存在の深泥池。
そんな素晴らしい深泥池がなぜ心霊スポットとされてしまったのでしょうか。
深泥池発祥・タクシーの怪談とは?

1969年10月6日深夜。
あるタクシーが京大病院前で40歳前後の女性客を乗せた。
行き先は深泥池。
池に着く頃、後部座席の女性の姿が消えており、女性が座っていたシートが濡れていた。
タクシーの運転手は交番へ駆けつけ警察も捜索するが女性は見つからず。
当日の夜、京大病院では深泥池近くに住む女性が亡くなっていたことが判明した。
この話は週刊誌で大きく報じられるばかりではなく、警察も事件として捜査し新聞にも掲載されました。
単なるオカルトな話題として済ませなかったことがこの怪談をより有名なものにしました。
オカルトで済ませなかった理由として、実際にこの一件だけでなく様々なタクシー会社の運転手から「女性客が消えた」と通報があったためです。
大の大人が真剣に「乗客を落としたかもしれない」と通報してきたため、警察も事件として取り扱ったってことですね。
この付近のタクシー運転手どうしで
「俺もついに乗せたよ」
なんて会話が飛び交うほど目撃情報があったとされます。
噂が広まる中、深泥池行きを嫌がるこの付近のタクシー運転手も少なからずいたようです。
深泥池が心霊スポットとされたその他の背景
歴史ある美しい池が心霊スポットとして有名になったのは「タクシーの乗車客が消えた」という話以外にもいくつか理由があります。
やはり歴史ある京都ならではの古い伝承が影響しているようです。

人間界への出入り口として鬼が使った場所
平安京から見て鬼門の”北東”に位置する深泥池。
その昔、貴船神社に住む鬼が地下水脈を通ってこの深泥池から出入りしていた、という言い伝えがあります。
そして都で悪さをし、またこの深泥池から魔界へ帰って行った、とされました。
そもそも平安京は中国の風水思想を取り入れられ造られたもの。
この時代の人々は方角に関して強い神秘性・超自然的な力があると信じていたんでしょうね。
修行中の僧が弥勒菩薩の姿を見た

奈良時代に行基(ぎょうき)という僧が深泥池にて修行中、池面に弥勒菩薩が現れるのを見た、という言い伝えもあります。
そのため古くは「御菩薩池」という表記で「みどろいけ」と読ませていました。
深泥池に限らず池や湖など水がある場所には神秘性があるとされ、全国各地でもさまざまな伝説が生まれています
その中でも深泥池は特に歴史が古い池なので、よりミステリアスで謎めいた性質があるんでしょうね。
自然が生み出す池の特徴「河骨」「底なし沼」「浮島」
深泥池の池畔にはかつて「河骨」(こうほね)という薬草として使われる水草が自生していました。
河骨は根茎が白く骨のように見えることからその名がつけられ、その響きや印象からも深泥池に不気味さを生み出す要素となったようです。

また、深泥池は「底なし沼」とも言われています。
水深は2m弱で泥は数メートルの蓄積であり実際には底はありますが、いったん入れればぬかるみに足を取られ危険なことは確か。
そして「底なし」というイメージは心霊スポットに求められるおどろおどろしい雰囲気にぴったりだったのでしょう。
また、深泥池には植物の遺骸が泥炭化して形成された「浮島」が存在します。
この浮島は夏は浮き、冬は沈むという不思議な特徴があり、こちらも深泥池の不思議さを増した要素の一つと言えるでしょう。
※近隣住民の方の迷惑になります
訪れる際はご注意を
写真を見ても分かるように深泥池周辺は住宅が立ち並び、すぐ近くで生活をされている方がいます。
深泥池を訪れることは自由ですが、深夜に騒ぐ等の迷惑行為は絶対にやめましょう。
